天声手帳

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ネットを利用した資金調達がすごい

幕末に渋沢栄一幕臣としてパリ万博を視察し、そこで産業・経済のしくみを学び、帰国後日本国内に広めた。

有志を募って株主になってもらい、それを元手に会社をつくる株式会社のしくみは今は当たり前だが、最初は誰も信じてくれる人がいなくて資金が集まらなかったと思う。それでそれまで国営だった銀行を民間に払い下げて株式組織にした。お金持ちが資金を出し合って銀行の経営を引き受けた。株式は証券取引所ができて、そこで運営した。しくみができると渋沢は一般の会社をつくるときにも応用し500近い会社設立にかかわった。

 

実は同じようなことが今、ネットの世界で確実に広がっている。クラウドファンディング・CFのしくみである。

ふるさと納税のポータルになっている「ふるさとチョイス」が、その町の地域おこしにかかわる施策を具体的に明確にして(たとえば葛飾北斎美術館を作る、犬殺処分ゼロの保護施設をつくるなど)寄付をよびかける方式である。すでに手掛けている施策の資金調達ではなく、全くゼロからはじめる新しいプロジェクトでもOKなところがすごい。返礼品は今までと同じ地域の特産品にするか、新しいプロジェクトが箱物だったらその入場券でもいい。これは行政がかかわっているので、GCF(ガバメントクラウドファンディング)と呼ばれる。

 

行政でなく、有志が集まってプロジェクトをつくり資金調達するのが通常のCFである。「REDY FOR」では腸内フローラの検査を開発するプロジェクト、「マクアケ」では能登耕作放棄地を復田して酒米をつくりそれを地域特産の日本酒にするプロジェクトがあった。前者のお礼は検査キットや検査体験、後者のお礼はお酒である。
どちらも目標金額を達成し、寄付者は確実にお礼がもらえる。熊本の災害支援のようにお礼のない寄付のみでももちろんOKである。

 

株式会社に比べればまだ規模は小さいが、これから大規模のものも出てくると思う。株式会社のようにいつまでも株主に対する気遣いが必要なく、返礼品で関係が終了するのもやりやすい。株式会社も今は1円から始められると聞いているが、新たに事業を始める人がこの方式を採用しはじめたら、株式会社が減ってしまう?

 

「ゼンモノ」というCFで鉄の溶接のプロジェクト「アイアンプラネット」を立ち上げた町工場の鉄工所に新卒の社員が、入社したのが話題になった。新卒の社員は研修のインターシップで体験しこのしくみに魅力を感じたという。
もう新卒の社員が株式会社に入らない時代が始まっているのだ。

 

現代に渋沢栄一はいないが、誰でも渋沢栄一になれる時代が確実にやってきた。

どんなアイデアでプロジェクトを立ち上げるかから始まって、資金だけでなく専門スキルのあるPJメンバーを募集し、PJを立ち上げたら、ネットで上手にプレゼンし資金集め、目標を達成したらPJの実現にむけて走り出す実行力といろいろなスキルと情熱が求められる。しかしリスクが少なく楽しい仕事で、世の中の人に喜ばれるならこんなにやりがいのある仕事はない。


これからのネット社会に生きる若い人たちには、すばらしい未来が待っていて、うらやましい限りである。