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天声手帳

話題のニュースや身近な事件で感じた事です

電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも

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人生下り坂最高!の日本縦断こころ旅をみていたら、とある駅前のやや傾いた郵便ポストを撫でながら火野正平さんが♬電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも♪とはずんだ声で楽しそうに言った。

 

これは若い人にはわからないかもしれないが、昭和30年~40年にかけて活躍していた落語家、柳亭痴楽さんの「痴楽・つづり方教室」の一節である。空がこんなに青いのも、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのもみんなわたしが悪いのさと続く。七五調でリズムがいいのと誰のせいでもないことを自分のせいというおかしさに私の中学時代ずいぶんはやった。

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尾藤イサオの「悲しき願い」のサビ、♬誰のせいでもありゃしない、みんなおいらが悪いのさ♬が流行ったのも昭和39年である。高度成長期で周りの人たちがどんどん豊かに変わっていくのを目にしながら、自分だけが取り残されている不安は誰しも感じている時代だった。なんとかバスに乗り遅れないようにとみんな必死でがんばっていた。そんな時、がんばれない自分を慰めてくれる歌だった。

 

今はなんでも人のせいにする風潮になってしまったのだろうか。戦後のやみ市が思い起こされる歌「星の流れに」の歌詞に♬こんな女に誰がした♬とある。これを歌った歌手は最初こんなひとのせいにする歌は歌いたくないと言ったそうだ。でもこの歌よく聞くと人より自分を責めている歌で、この部分は日本語独特の修辞法の一つ反語になっている。誰がした?(誰もしない、自分のせい)という意味である。

 

人のせいにする歌ははやらない。みんながやることだから。自分のせいとなかなか言えないので、こういう唄がヒットする。会社で業務改善の取り組みをした時、指導の先生はなぜそれがうまくいかないのかを考える場合、しくみや会社のせいにしないで自分のせい、自分たちのせいにしてそれを改善するようにと言っていた。
発表のときも、自分たちの失敗を成功に変えたチームが優勝した。

 

♬上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り♬つづり方教室の「恋の山手線」の一節である。あのくしゃくしゃにした顔で♬鶴田浩二はいい男、それよりずっといい男♬とはぎれのいい節回しで笑わせてくれた名落語家がなつかしい。