天声手帳

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平仄(ひょうそく)が合わない

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2015年12月18日日銀の黒田総裁は金融政策決定会合後の会見で、ETF買い入れ枠の新設について、「安倍内閣が進める成長力強化や官民対話と平仄が合っているが、政権のサポートではない」と説明した。
偉い方は時々わざと言いなれない言葉を使う。この場合「平仄」とは辻褄(つじつま)が合うくらいの意味だろう。平仄とはもともとどんな意味なのだろうか。

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コトバンクで調べると、「中国,古典韻文の修辞上の術語。中国語の四声 (平,上,去,入) は,なだらかな声調の平声と,抑揚を伴う上去入の3声を合せて呼ぶ仄声とに分類されるが,一義的にはその平声と仄声との対立を平仄という。」となっている。中国の漢詩の韻律を調整するために使用するものらしい。


日本語では平仄を整える→「てにをはを整える」、平仄が合わない→辻褄が合わない、条理が合わない、の意味に使われる。だから黒田総裁の「平仄が合っている」という言い方は本来ないが、辻褄と同じ意味に使われ始めると、否定でなく肯定の場合もOKになってしまったと思われる。

 

漢詩と言えば、奈良時代の751年に日本最古の漢詩集、 懐風藻が発行されている。この中には大友皇子大津皇子漢詩がおさめられ、大津皇子日本書紀に「詩 賦の興ること、大津より始まる」と書かれているのが有名である。
選者は天皇の名前を漢風諡号に変えた淡海三船恵美押勝の乱藤原仲麻呂とも言われるが、この漢詩集もすでに必ずしも「平仄が合わない」と言われている。唐の発音の韻律なので、日本語にするのは難しかったのだろう。

雅文学への誘い(福岡大学図書館)漢詩の歴史1/3

 

ビジネスジャーナルでは落選した鳥越氏の不誠実さを追求して、「後出しジャンケンと後出し「新潮」で引導を渡され、妙に平仄が合った構図で終わった」と結んでいる。これは辻褄でも条理でもなく、後出しの言葉の重なりに過ぎないので、平仄が合うとは言わないだろう。

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